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2014年12月15日

【小説】くだらない話 01

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side 新井シンジ「はじまり」
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ケータイのない時代、中学生の僕はある女の子と文通をはじめることになった。

きっかけは実にありふれていた。
三文小説によくある夕日に照らされた校舎裏というシチュエーションを思い浮かべてほしい。

好きです、と神谷ナオが言った。
そして、僕に手紙を差しだしてきたのでとりあえず受け取ってみた。

いまだ状況がつかめない。
どうしていいか分からず硬直していた僕を見かねたのか、神谷はちょっとだけはにかんで唇を動かす。

「あとで読んでね、新井くん」

そう言って、校舎裏の影から夕日にそまるグラウンドへと駆けだしていった。

野球やサッカーや陸上とそれぞれの青春を謳歌している生徒たち。
乾いた土のうえに引かれた白線。
走る神谷の制服や風に吹かれて柔らかくゆれる黒髪――

すべてが、オレンジと群青の明暗に染まっていた。

神谷を見送った僕は手紙を上着のポケットに押し込み、家路についた。

夕暮れ時の告白か。
恋愛ドラマや小説なら、とてもドラマチックかつ乙女チックな展開だ。


ただ、僕にとってはどうにも面倒なことでしかなかった。


さて、どうやって断ろうか。
歩きながらその方法を考えていたが、いい案は浮かばなかった。
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posted by c-book at 17:48| 【小説】くだらない話