clear.gif

2015年06月25日

【小説】くだらない話 08

--------------------------------------------------------
最初から読む(目次へ)⇒

side 神谷ナオ「罰ゲーム」
--------------------------------------------------------
そこから話は夏休みがあっという間に終わるくらい早く進んだ。
私は結局、告白ごっこを断れなかった。

仲間意識という圧力に負けたのだ。
さすがに声に出して思いを伝えるのは恥ずかしかったので手紙にした。

そして、告白決行日がやってくる。

授業が終わったあと、私と島田さんたちは彼がいるはずの校舎裏へ向った。
園芸道具の置かれた倉庫や花壇がそこにあるからだ。

体育館からも近く部活の合間に、花に水をあげる彼を見たことがあった。
いないことを祈ったが私の願いは神様に聞き入れられなかったようだ。

背後から名前を呼ぶ。
彼が持っていたシャワーホースを地面に置いてふりかえり、私の顔を見た。


瞬間――
金縛りにあったように身体が動かなくなった。


そのくせ心臓が今までにないくらい激しい音をたてる。
胸のあたりから頭に血液が上ってゆき、顔が熱くなるのだ。

彼はひどく間の抜けた顔をしていた。
見るからに眠そうで気だるそうな表情だ。


ただ、なぜだろう。


彼はここにいることが幸せなんだなと思えた。


私は少しだけ深く呼吸して――


「好きです」


なにを言ってるんだ。私。


身体が勝手に動いて、彼に手紙を握らせた。


しばらく硬直したあと苦笑いして。


「あ、あとで読んでね、新井くん」


違う。そうじゃない。
私はそのまま後ろを向いて走り出してしまった。
--------------------------------------------------------
次の話へ⇒


posted by c-book at 15:45| 【小説】くだらない話