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2015年07月02日

【小説】くだらない話 13

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side 新井シンジ「文通」
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あの日も同じように、僕は水やりをしていた。
そこを急に呼び止められて告白された。

下校時刻を過ぎたあの時間帯、校舎裏に来る生徒はほとんどいない。
たまに体育館からバスケ部が顔を出すくらいだ。
マネージャーをしている神谷は、僕の日課を知っていたのだろう。


少し恥ずかしくなった。


小学校の卒業アルバムに書いた将来の夢を勝手に見られたようなかんじだ。
笑っているんじゃないのか、バカにしているんじゃないのか、そんな考えが頭をよぎる。

教室でも園芸部で活動していることは誰にも話していなかった。
所属はしているが帰宅部だと答えていた。

その嘘に、もう意味はないだろう。本当に面倒なことになったものだ。

僕は花壇から離れて水を止めた。

紫の花弁に残った雫が、夕日をうけて煌めく。
小さなガーネットの宝石が散らばっているようだ、と言えば聞こえがいいかもしれない。

アイリスの花言葉は、良い便り。
神谷にとってはそうでも、僕にとってはそうならないだろう。

咲き乱れる花がそよ風にゆれ、宝石が茜空をかろやかに舞う。
風にのったアイリスの甘い香りが校舎裏に満ちていった。
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posted by c-book at 16:06| 【小説】くだらない話