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2015年07月02日

【小説】くだらない話 17

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side 新井シンジ「文通」
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印象も変わった。
物静かというより、明るい――

いや、子供っぽい性格なのだと思う。

僕はハンバーガーの中に入っているピクルスが苦手だと手紙に書いた。
それが彼女の好物だったらしく、酸っぱいきゅうりについての
うまい不味いの争いが二ヶ月近く続いている。

僕は正直どうでもいいのだが、
彼女がしつこく食い下がってくるため、しかたなく話を合わせていた。

断じて僕がこだわっているわけではない。

ただ、神谷との微妙な関係は文通をはじめた時から変わっていない。
答えたくない質問は話をそらすか、嘘で固めた人物像を演じて返した。


ひとつだけ変えたとすれば彼女の呼び方だ。


手紙の中ではナオ、と苗字ではなく名前で呼んでいる。
これも彼女からの提案だった。

自分から彼女に対して質問をした手紙は一通もなかった。
別に知らなくてもいいと思っている。

僕と神谷は恋人でも友達でもない。
ただの同級生、シリアイ、ただそれだけなのだ。

無駄に繰り返される手紙のやり取りに嫌気がさしてきた頃、ある変化が訪れる。
神谷に気になる人ができたのだ。

彼女はある手紙で、バスケ部の村沢先輩にしつこく言い寄られて困っていると相談してきた。
その話に興味がわいた僕は頼まれてもいないのに先輩の肩を持ち、彼の良さを神谷に説いた。

先輩は顔も頭も良いし、強豪校から誘われるほどバスケもうまいと噂になっている。

言い寄ってくるのは好きな気持ちをストレートに表現しているから、
なんて都合のいい話を書き連ねた返事だったが、
彼女の反応を見るとどうやら信用しているようだった。
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posted by c-book at 16:23| 【小説】くだらない話