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2015年07月02日

【小説】くだらない話 18

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side 神谷ナオ「決意」
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バスケットボールが打ち付けられる音がひびく体育館の隅で私はボールを磨いていた。

「なあ神谷、今度映画でもいかないか」

少し面長の顔で私を見下ろしながら村沢先輩が話しかけてきた。
身長差が30cmほどあるため、私も顔を少し上にむけて答える。いえ、遠慮しておきます。

「連れないなぁ、じゃあさ、次の練習試合で俺が活躍し――」

それより次の練習試合のオーダーなんですけど、と笑顔で話をさえぎる。
彼はしぶしぶといった表情で練習試合に出る部員の名前を答えはじめた。

ちなみにこのような肩透かしのやりとりはもう10回近く行われている。
いい加減、脈がないと思ってほしい。

先輩が答えたメンバーを紙に写し、私はまたボール磨きに集中した。
何か話しかけられている気がするが、周りが騒がしくてよく聞こえない。

聞こえない。



彼と文通をはじめて2ヶ月がたつ。
8回ほどの手紙のやりとりだが、彼を少しだけ知ることができた。

野菜フライが好きで、ピクルスが嫌い。

私はあのすっぱさが好きなのだが、彼にはなかなか理解してもらえない。
最初の文通からずっと好き嫌いの話が続いていて、
正直どうでもよくなっていたのだけど、彼がしつこいので話を合わせている。

私が意地をはっているわけではない。断じてない。

趣味はもちろん園芸で好きな花はコスモスらしい。
意外と乙女チックで少し笑えた――



けど、これも本当かどうかは分からない。
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posted by c-book at 16:30| 【小説】くだらない話