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2015年07月02日

【小説】くだらない話 19

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side 神谷ナオ「決意」
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私は彼の手紙に違和感をおぼえていた。
受け答えは彼氏彼女のやりとりそのものだし、他の人が見ればうまくいっていると感じる手紙だ。

けど、完全に決めつけてこれだとは言えない何か、胸の奥にひっかかってしまう何か、
彼が書いた言葉にはそれがあった。



「おい、ちょっ、聞いてくれよぉ」
まだ、話しかけていたんですか。先輩。

「映画行こうぜ、なあ」
もういいって。

「ん? なんだよ、じっと見つめて」
「いや、先輩かっこいいな」
「なに!? 本当か」
「って、後輩の佐藤さんが言ってましたよ」

続けて、少し気分が悪くなったので早退します、と伝えて体育館を後にした。

村沢先輩と私、私と彼の関係は少し似ている。
彼は私をうざったいと感じている、更衣室で制服に着替えながらそんなことを考えた。

相手は迷惑しているかもしれないのに、こっちの勢いだけで手紙を押しつけているのだ。
ロッカーの戸を勢いよく閉め、ため息をついた。

何やってんだろ。
一度あきらめられた。
だから、今回だって大丈夫なはずだ。

そう考えていても、なぜか手紙をポストに投函してしまう。

楽しいから、彼との文通が。
それだけなのに。
うまくいかない。

これ以上、続けることに意味はないのかもしれない。
最初はそうでもなかったが、今は――



彼に嫌われたくないという思いが私を支配していた。
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posted by c-book at 16:32| 【小説】くだらない話