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2015年07月02日

【小説】くだらない話 24

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side 神谷ナオ「私と先輩」
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私は、私自身が心底嫌いになっていた。

好きでもない男と遊園地に行ったり、映画を見にいったりしていた。
作りものの顔で笑いかけ、できるだけ楽しそうに嬉しそうに彼女という役割を演じた。

心は虚ろだった。
そのくせ、彼を思い出すと胸のあたりがしめつけられるようで、苦しいのだ。

いっそロボットにでもなれれば、こんな思いをしなくてもいいだろう。
油がきれて身体が軋みだし、バネやねじが錆びついて外れてゆき、
動かなくなって何も感じなくなる。

人間は不思議で不自由で不規則で不満ばかりがつきまとう。
涙腺は壊れやすいくせいに心はなかなか壊れてくれないんだ。

私はそんなことを考えながら、最後の手紙を書いた。

次の日の朝、靴箱の前で彼と会った。

はい、コレ。私は手紙を差し出した。
読んでもらいたいの、と言った。

「今日は手渡しなのか」

深刻な表情さっしたのか、彼ははじめて私の顔をまっすぐ見た。

「なにかあったのか」
なんでもないよ、気にしないで。

嘘をついた。どうしてこんなときだけ、と思った。
今まで生きてきて一番見られたくない顔だ。

私はすぐに駆け出したかった。
けれど、重くてからみつくような空気が足を地面から離さない。
必死で動かそうとすると、先に声が出た。


それじゃ、バイバイ。


言葉を発した瞬間、足が軽くなり私は急いでその場を後にした。
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posted by c-book at 17:02| 【小説】くだらない話