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2015年07月02日

【小説】くだらない話 34

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side 新井シンジ「嘘つきと泣き虫」
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僕と同じ、嘘と本当のまじった手紙。
ただ――ひとつだけ、決定的に違うところがある。

僕は自分のため、彼女は僕のためにそれを書いたということだ。

神谷と村沢先輩の関係は彼氏彼女とよべるものではないような気がした。
手紙に書かれたままなら、僕は彼女をつれて逃げてはいないだろう。

僕と文通をやめるために、神谷は先輩と付き合っていたのかもしれない。

手紙の文章は何度も書き直されたのか、
消しゴムのあとや筆圧によって転写された透明な文字が数多く残っていた。

僕の名前がうまく書けなくて、
知らない漢字を必死で書いて、
ありがとうなんて聞きなれた一言に納得がいかなくて、何度も書きなおした。

そうして新しい紙を使うたび、上から書かれた彼女の気持ちがそこに残されていったようだ。

僕は文末にも消された文字をみつける。
うっすらとしか視認できないそれをシャーペンでこすり、浮かび上がらせた。


「まだ、文通をつづけたい」


僕はそれを見つめたまま立ち尽くした。
かちりかちりかちり、と時計の針だけがその単調な音を響かせていた。
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シンジEND⇒
ナオEND⇒


posted by c-book at 17:30| 【小説】くだらない話