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2015年07月05日

【小説】その瞳に写るもの 06

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「撮るなら金払えよ」
「あっ、ごめんなさい」

彼女はカメラから顔を離し、俺をまじまじと見た。
ありあまるほどの興味を含んだ好奇の目だ。そんなに気分の良いものではない。

「うーん、なるほどねぇ」

探偵きどりの女の子は、肩までのびるつややかな髪と黒目の大きな瞳が特徴的で、
きれいというより可愛いらしい顔立ちをしていた。

歳の頃は高校生くらいだろうか。
きゃしゃで小さな身体、飾りけのない服装から清潔さと軽快さを感じる。

それだけならどこにでもいるような娘なのだが、
腰からさげた小型のバッグと首からぶらさげている古い型のカメラが彼女をさらに印象づけていた。

推理を終えたのか、女の子はひとさし指を俺へむけて。


「お兄さんはカメラマンで。宿を探していると見た!」


心臓が波打った。
彼女とは初対面のはずだ。外見でそれが推察できる要素はない。

「……なんで分かった」
「たぐいまれなる洞察力かな。ちなみに出版社も当てよっか……。新空舎でしょ」

背筋がぞくりとした。
気持ち悪いくらい当たっている。関わり合いたくないので、逃げようとして彼女に背中をむけた。

「ちょっと待ってよ」
振り返らずにいやだ、と答えた。
「脅かしたことは謝るよ。種明かしもするから」

そのまま歩き去ろうとして、何かおかしなことを言われたのに気づいた。

なんのことだ、と言いながら俺は女の子の方へ視線を移すと、
彼女は申し訳なさそうな表情をしていた。
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posted by c-book at 20:38| 【小説】その瞳に写るもの