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2015年07月05日

【小説】その瞳に写るもの 08

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名前や生まれ、今までどんな仕事をしたのか、
そのとき撮影した写真や掲載雑誌は車にあるのか、あるなら見せてほしい。

カメラの機種は、車につんでいる機材はどんなものなのか、それらを後で触らせてほしい等々。
まとめて話すのが面倒なのと運転に集中したいので、藤原一成という名前だけ答えてあとは無視した。

「藤原さん。話を聞いてよ」
「いやだ。溝にはまって車を傷つけたくない」

「じゃあ、私の心は傷つけてもいいんだ。こんなに親切にしてあげてるのに……
大人は汚いね。か弱い女の子を弄ぶだなんてさ」

「……人聞きの悪いこと言うな。だいたい、駅前であんな客引きしててよく捕まらないな」

春花は饒舌に答えはじめた。

雪がなくなるこの時期は観光客が減少するため、町自体の収入も減る。
そこで駅を訪れた人に土産物屋や観光地を案内する無料の観光ガイドサービスがあるのだ。

彼らが各所でお金を使えば町全体が潤うし、クチコミ効果も期待できる。
実際、このサービスをうけた人がブログなどで紹介したため、少しずつだが観光客が増えているそうだ。

高校生以上で土地勘のある者であればだれでもガイドになれる資格があり、
給料は町内会の経費からだされているとのことだ。

「ほんとだったらガイドの内容を丁寧に話すんだけど。
本職のカメラマンと話すのはじめてで、張り切っちゃって」

カメラや現像代を手に入れるため、春花はこのバイトをよく引き受けていた。
同行した客の写真を撮る機会も多いので勉強になる。

旅館を経営する両親からも学業を優先することを条件に認められているそうだ。
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posted by c-book at 20:49| 【小説】その瞳に写るもの