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2015年07月05日

【小説】その瞳に写るもの 14

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だが、ここで引きさがるわけにはいかない。

俺は同業であることを告げて情報交換をしようと持ちかけた。
彼らは、だれでも知っているような大手週刊誌の記者だった。

「いつからですか」
「昨日からだ。裏にもふたり配置している」とカメラマンの男が答えた。

「まだ撮れてないみたいですね」
「まあな。神城と女が中にいるって情報は近隣の住人から聞き出したんだが、
あいつら警戒してんのか、なかなかでてこないんだよ」

「叙庵に宿泊している記者はいないんですか」
「……予約でいっぱいだった。というより、いちげんさんはお断りみたいな雰囲気でな。
観光客を装って中に入ろうとしたんだが玄関で止められちまったよ」

さすがに老舗だけあって警備は万全だ。

「そっちの情報は?」
「相手女性のことですよ」
「一般人じゃないのか……」
記者の男が口をはさむ。どうやら彼らも知らない情報のようだ。

「裏が取れてるわけじゃないですが、田尻智美だという話があります」

記者たちはなんだと、という形相でこちらを見た。当然の反応だ。
田尻と言えば、若手有望株の舞台女優なのだ。

元々はアイドルグループの出身でその人気絶頂時に女優へ転向し、
類稀な演技力と天使の声と称される声によって数々の新人賞を総ナメにしている。

さらに驚くべきなのは、
3日後に撮影が予定されている神城主演のドラマにヒロインとして出演が決まっているということだろう。

話題性はまちがいなく今年一番であり、彼らの写真は数千万円ほどの価値があるのではないかと思われた。
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posted by c-book at 21:08| 【小説】その瞳に写るもの