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2015年07月06日

【小説】その瞳に写るもの 19

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「そうなんだ。私なんか、カメラをずっと持ち歩いてるけど」
「不審者あつかいされるだろ」
「このあたりはみんな顔見知りだから、心配ないの」

そういう問題ではなく道徳的にまずいだろう。
知り合いであれ人にカメラのレンズを向けられるのは気分が良いものではない。

親しき仲にも礼儀は必要だ、と呆れながら言ったとき、
狭い道のむこうから女子高生らしき女の子たちが歩いてきているのが見えた。

彼女らの格好を目にして、田舎も都会も制服の着こなしはそれほど変わらないのだと思った。

「あっ、小町だ」

女の子のひとりが口火を切る。
春花は顔をふせて彼女たちを見ないようにしていた。


場の空気がどんよりと濁り、とても居心地が悪い。


先ほど喋った子とは別の、髪も身長もまつ毛も長い大人びた女子が冷たい笑みをうかべながら、
学校サボってなにやってんの、と言う。

「……関係ないでしょ」
「関係なくないよ。同級生じゃない」

その声には嫌味しかこめられていない。

「こんなときだけ、喋りかけてくんのね」
「そんなの私の勝手だし。まあ、あんたなんて居てもいなくても同じだからいいけど」

あからさまな悪口を吐き捨て、女子高生たちは俺たちの横を通りすぎていく。
口ぶりからして春花の知り合いではないかと――

「なによ。人の顔をじろじろ見て」

どうやら理由を話してくれそうな気分ではないらしい。
俺はとげとげしい雰囲気から逃げるように歩きだした。春花も無言であとを付いてくる。

空はオレンジと群青の明暗に染まり、昼が夜に飲みこまれていく。
からっぽだと音で主張する腹を手でさすりながら鈴竹への帰路を急いだ。
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posted by c-book at 17:15| 【小説】その瞳に写るもの