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2015年07月06日

【小説】その瞳に写るもの 24

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元哉さんが俺に気づいておじぎをした。
彼はそろそろと階段をのぼりきり、道をふさいですいませんと言った。

「あの、ちょっとだけお話させてもらっていいですか」
「なんでしょうか」

昼間の会話が頭をよぎり、彼が自身の父に対して抱いている感情を知りたくなった。

「写真、お嫌いなんですか……」
「なぜですか」
「おじいさんの写真を見て、険しい顔をされていたので」

彼は俺から目線を外し、窓を見た。
ガラスは光の加減で鏡となり、廊下にいる俺と元哉さんを写していた。
そのむこうには仄暗い闇夜が広がる。

「……かもしれませんね。少なくとも、良い思い出はありません」
「娘さんはいいんですか」

失礼な問いかけだが聞かずにはいられなかった。元哉さんは優しく笑って答えた。

「春花は、物心ついたときから父が遺したカメラを触っていました。最初はやめるように促したんですが、
ああいう頑固なところは母親そっくりですよ。だから、もう諦めています」

「……すいませんでした。詮索することじゃないですよね」
「いえ。藤原様もカメラが趣味だとお聞きしておりますので、興味はありますでしょうね」

趣味ではなく仕事なのだが、彼と奥さんには伝えていない。
バレてしまうと神城が滞在している間は、カメラを取りあげられて旅館に監禁させられそうだ。

「そういえば、昼間は娘さんがいて助かりましたよ。
無料の観光ガイドですか、この町ではそういった試みもされているんですね」
「えっ……」
「娘さんから学業の合間にそういったバイトをしているという話を伺ったのですが」

元哉さんは急に険阻な顔色になり、深々と頭を下げて申し訳ありません、と謝罪してきた。
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posted by c-book at 18:02| 【小説】その瞳に写るもの