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2015年07月06日

【小説】その瞳に写るもの 27

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春花曰く、ひとつしかない浴場を効率よく使うため、
温泉の清掃を終えるとそのまま入浴をすませるらしい。

軽々しく中に入っていればもっと問い詰められていたかもしれない。危ないところだ。

他にも、経営側の人間なのになぜ浴衣を着ているのか尋ねたら、
デザインが気にいっているからだと答えた。

「あとは宿泊しているお客様へのサービスかな」

いらない気をつかうなよ。
それに、彼女の浴衣の着こなしはどことなくおかしい。
どこが、とは明確に言えない奇抜さがある。

「……浴衣、着るのへただな」
「うっ……じっと見ないでよ」


春花は顔を赤らめながらそう呟いた。


「恥ずかしいなら着なけりゃいいだろ」
「そんなに変かな……」

小町家の美人女将に教えてもらえばいいではないか。
いや、あの人に遊ばれたからこそ、こうなっているのかもしれない。
彼女がそれに気づかないことで、さらに喜ばれているんだろうなとちょっと気の毒に思った。

俺たちは浴場の近くにあるマッサージ機や自販機の置かれた場所に移動した。
そこで春花にジュースを買い与え、まわりにだれもいないのを確かめてから明日の予定を話しはじめた。

「井上に会っておきたい。それもなるべく早い時間に」
「いいけど、大丈夫なの?」
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posted by c-book at 18:18| 【小説】その瞳に写るもの