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2015年07月06日

【小説】その瞳に写るもの 37

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携帯灰皿に吸殻を押しこみ、ポケットから携帯電話を取りだして
画面を確認すると時刻は11時すぎとなっていた。

俺は、なぜかごきげんな観光ガイドに導かれて高台を後にした。

温泉町への道を歩きながら、井上との交渉方法を模索していた。

叙庵は警備されていて部外者はまわりに近づけない。神城は外出を控えている。
こうなると館内に出入りできる者を味方につけるしか手立てはない。

言い方は悪いが、彼女を買収して中にいる神城たちの写真を撮影してもらうのが最善策だ。
出版社に話を通せば経費としていくらか情報料を渡せるだろう。

問題はふたつ、井上が交渉に応じるのかということ、
あの有名誌の記者が彼女と交渉をはじめてしまうことだ。

前者は駆け引きしだいだが、後者の場合、とくに彼女が金で動く人間だと、
むこうの方が多額の金を用意できるためにこちらが不利となる。

春花に聞いたところ、俺の他に約束をとりつけた人物はいないらしいが、
それでもなるべく早く彼女と話がしたかった。

昼食時だが、大通りは賑わいをみせることなくひっそりとしていた。

道を行きかうのも老人ばかりで、まれに午前中で授業を終えた高校生らしき
男子や女子たちが歩いているだけだ。

俺たちは旧式のカメラが飾り窓にならんでいる写真店をでて、
待ち合わせの喫茶店がある駅前に移動した。

野沢の着いたときに昼食を食べた店なので道順は俺も知っている。
井上と会うついでに昼食もそこですませようとしていた。
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posted by c-book at 18:44| 【小説】その瞳に写るもの