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2015年07月06日

【小説】その瞳に写るもの 44

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なんだよ。
おかわりはなしだぞ、と心の中で愚痴った。

「あれからあいつらと近くの公園で話したの。
いつまで、いじめなんていうつまらないことをやるんだ、って。
そしたら、あんたらが学校辞めれば終わるんじゃないのって言われた。
本気かどうかは分からないけどね」



深く暗い海の底にいるのではないかと錯覚するほど重くるしい空気が、公園の一角を支配している。
春花は首からさげていたカメラをリーダー格の女子に見せつけて言いはなつ。

この世にやましいことがひとつもない人間なんていない。
私がその気になれば、あなたの本性を暴いてクラスから孤立させられる、のだと。

あんた頭おかしいの、と女子は冷笑して相手にしない。

春花は、いつも偉そうにしているあなただから反発している人も多い、
隣にいる娘も友達づらしているけど何を思っているかは分からないんじゃないの? と静かに言った。

女子たちは顔を見合わせて困惑していた。
統率がとれないことにイラついたその女子がふざけんなよ、と春花の服を強引につかんできた。

春花は、ここで私が怪我をすれば親もきっと騒ぎだす、
あなたは今までどおりにすごせなくなるけど構わないの、と言い、
女子は春花の意志の強さに気おされたのか口をつぐんだ。

春花はたたみかけるように――
私はあんたのことなんて、なんの興味もない!

けど、里菜を巻きこむのなら容赦しない。
どんなに汚い手を使っても後悔させてやるから。



「それだけ言ってここまで帰ってきた。
一時的だけど嫌がらせはなくなると思うし、里菜にもこのことをちゃんと話すつもり」

まわりのみんなと違うところがある、その個性が人を孤立させていくのは世の常だ。
冷血な女子生徒もそういう意味では特別であり、
いじめる側といじめられる側の中間に紙一重で存在する人物なのかもしれない。

春花は自身の個性を理解したうえで、友人を守るために宣戦布告をした。
他人の後ろめたい場面を写すという脅しによって。

行動だけ見れば俺と同じ。下衆な行為でしかない。
ただ、彼女には明確な意志があり信念があるのだ。

それは、俺とは大違いで――正直、羨ましいとさえ思えた。
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posted by c-book at 19:26| 【小説】その瞳に写るもの