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2015年07月06日

【小説】その瞳に写るもの 53

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「俺が茶屋にむかったのは記者の動向を探るためだ。あいつらには悪いが、ぬけがけしたいからな」
「どうだったの?」
「饅頭食ってくつろいでたよ。今後も気づかれることはないだろうな」

地形の関係上、叙庵へ行くには茶屋の前にある車道を必ず通らなければならない。
あそこで待ってれば神城を捕まえられると記者たちは考えており、
町内会は彼らをわざと泳がせているのだろう。

記者たちのような不穏分子は一箇所に固めておいた方が管理しやすく、
茶屋の売り上げにも貢献してくれる優良な客となる。
でなければ、仕事人とやらに追い払われているはずだ。

観光客を装ってはいるが彼らのはなつ空気はどこか異質で緊張感につつまれている。
はっきり言って、バレバレだ。

温泉町になじむという意味でも、俺は春花と行動をともにして良かったと思う。
少女を連れて歩く記者なんてどこを探してもいないだろう。

それに、彼女と出会っていなければ恵子さんの不自然な行動に気づかずに、
町内会の企みにのせられていたはずだ。

「昌庵に行くように頼んだのは賭けだった。別の旅館といっても色々あるからな。
ただ、叙庵をだしに使う以上、その経営者にも旨みがないとおかしい。
叙庵は有名だけど別館の昌庵はそれほど知られていないからな。
神城か田尻がサインでも残していけば、有名人が泊まる隠れ家的な宿、っていう値打ちがつくだろう」

春花であれば適当な理由をつけて昌庵の玄関に出入りすることができる。
隙を見て玄関先や下駄箱のなかにある靴を調べてほしい。無理はしなくていいから、
と頼んでおいたのがうまくいったようだ。
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posted by c-book at 20:03| 【小説】その瞳に写るもの