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2015年07月06日

【小説】その瞳に写るもの 68

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「これ。貰ってやる」
「貰ってやる、ってどういうことよ。徹夜までしたのにさ」
「頼んでないだろ。俺のせいで授業中に居眠りされても困るしな」
「だったら返して」と彼女はケースをひったくろうと手を伸ばす。
俺はそれを取られないように握り、ポケットに戻した。

ぶざけないで、と強い口調で言われたので、そういうつもりはないんだが、と少し笑って答えた。

「貰うかわり条件がある」
「なによ」
「記念がほしい」
「な、なに、まさか変なことじゃ」
俺はため息混じりに「あほか。人生の折り返し記念だ」

春花の腕をつかみ、鈴竹の玄関まで連れていった。
途中でちょっとした罵声と朝に食べた野沢菜をもどしそうになる暴力をふるわれたが、
制服が似合っている、とおだてたら彼女は急に下をむいて沈黙した。
近ごろの高校生は本当によく分からない。

靴を履いて玄関先にいた小町夫妻のもとへ行き、少々強引に春花をつきだした。
それぞれが顔を見合わせて混乱していた。

俺は近くに停めてある車から一眼レフカメラを持ってきて小町家の面々を誘導しはじめた。
彼らは俺のやりたいことに気づいたのか、少し戸惑いながらも指示にしたがってくれた。
あるひとりを除いては。

「しっかりならべよ。真ん中だ」
「だって、その……」

春花はもじもじとした様子で、着ているスカートのすそをつかんだ。
撮られることが、なんとなく恥ずかしいという気持ちは分かる。
だが、そこにいられると枠に入りきらない。
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posted by c-book at 22:26| 【小説】その瞳に写るもの